資産譲渡所得税

資産譲渡所得税とは、正式な税目ではなく、個人が所有する資産を売却(譲渡)した際に発生する譲渡所得に対して課される税金(所得税)の呼称です。

対象となる資産には、土地、建物、株式、ゴルフ会員権、金地金、宝石、書画、骨とう品など、売買できる経済的な価値がるものすべてをさします。

また、譲渡には売買・競売・代物弁済・交換・現物出資なども含まれ、所有権を移転する行為すべてが該当します。

譲渡所得は、所得税の対象となるため譲渡で所得を得た場合は、所得税の確定申告を行う必要があります。

今回は、譲渡所得税についての仕組みに触れつつ、複雑で、理解しづらい土地や建物を譲渡した際の所得税について解説いたします。

総合課税と分離課税

総合課税

書画・骨董品・美術品・土石の砂利などの動産、ゴルフ会員権・営業権・漁業権・特許権などの権利は総合課税の対象です。

総合課税の対象となる所得には、給与所得、事業所得、不動産所得、一時所得、雑所得などがあります。

総合課税はすべての所得を合算して累進課税により税金を計算します。所得が多くなるほど高い税率が適用されるため所得が多いほど税負担が増える仕組みです。

分離課税

分離課税の対象となるものは、土地・建物・構築物などの不動産、および上場株式・同族会社株式・出資金などです。

事業所得や給与所得などの他の所得と分離して計算されます。

分離課税とは、事業所得や給与所得などの他の所得と合算せずに、それぞれの所得ごとに定められた税率で税金を計算する方法です。

1. 土地建物を譲渡した場合の税金

譲渡所得の計算方法

譲渡所得の計算式は下記のとおりです。

課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

収入金額

土地・建物の譲渡対価として買主から受け取る金銭の額です。

上記のほかに、固定資産税及び都市計画税(未経過固定資産税等)に相当する額の精算金も譲渡対価の額として収入金額に算入されます。

取得費

資産を購入した際の費用(購入代金、手数料、改良費など)から建物などの減価償却費を差し引いた金額です。

代々引き継いできた土地のような購入当初の代金が分からないケースは、概算取得費を取得費とします。概算取得費は、譲渡収入金額の5%です。概算取得費は、取得費が不明な場合や概算取得費を使用した方が節税できる場合にも選択できます。

譲渡費用

資産を売却するために直接かかった費用(仲介手数料、測量費、印紙代など)を指します。

上記のほかに次の費用も含まれます。

  1. 立退料:借家人に支払う立退きのための費用。
  2. 取壊し費用:土地を売るために建物を取り壊す費用。
  3. 違約金:既に締結した契約を解除するために支払う費用。
  4. 名義書換料:借地権を売る際に地主の承諾を得るための費用。

特別控除

特別控除とは、譲渡所得に対して、一定の条件を満たす場合に適用され、税金の負担が軽減されます。

主な特別控除は次の通りです。

  1. 居住用財産(マイホーム)を売った場合の3,000万円の特別控除
  2. 被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の3,000万円の特別控除
  3. 公共事業(収用等)などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除
  4. 平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除
  5. 低未利用地等を売った場合の100万円の特別控除

2. 税額の計算方法

長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分

土地建物を譲渡した場合には、譲渡した年の1月1日現在における所有期間によって課税方法が異なります。

  • 長期譲渡所得:資産の所有期間が5年を超える場合
  • 短期譲渡所得:資産の所有期間が5年以下の場合

3. 税率

長期譲渡所得:20.315%(所得税15.315%・住民税5%)

短期譲渡所得:39.63%(所得税30.63%・住民税9%)

※ 長期譲渡所得のうち、所有期間が10年超の居住用不動産を譲渡した場合は次の税率となります。

長期譲渡所得が6,000万円以下の部分:14.21%(所得税10.21%・住民税4%)

長期譲渡所得が6,000万円超の部分:20.315%(所得税15.315%・住民税5%)

※ 所得税の税率には復興特別所得税が含まれています。

4. その他の論点

収入の計上時期

土地建物を譲渡した場合の譲渡所得は、いつの収入として申告すべきでしょうか。

申告時期は次の通りとなります。

原則:引渡し日(通常は残金の決済日)の年の収入として確定申告

例外:契約日の年の収入として確定申告することも認められています。

※ 上記は納税者が有利選択できます。

売却損(譲渡損)が出た場合の特例

一定の条件を満たす譲渡損が出た場合には次の特例が受けられ、税金の負担が軽減さらます。

  1. 居住用財産(マイホーム)の買い換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
  2. 特定の居住用財産(マイホーム)の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続や遺贈により取得した財産を一定期間内に譲渡した場合に、相続税の一部を譲渡資産の取得費に加算できる制度です。

これにより、譲渡所得を計算する際の取得費が増え、結果として所得税の負担が軽減されます

特例の適用を受けるための要件は次の通りとなります。

  1. 相続や遺贈により財産を取得したこと。
  2. その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
  3. 相続開始日から3年10ヶ月以内にその財産を譲渡すること。

5. まとめ

土地建物を譲渡した場合の譲渡所得税の計算は、大変複雑で、特別控除などの特例を受ける場合には、様々な書類を添付し、申告期限までに確定申告書の提出を行い、納税を行う必要があります。書類等の不備や申告期限までに申告できない場合、ペナルティが課せられることもあります。税理士などへの相談は早めに行うことをお勧めいたします。

当事務所では、経験豊富な税理士が、譲渡所得税に関する専門的なサポートを提供しております。お悩みやご質問がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

適切なアドバイスとサーポートを通じて、安心して確定申告が行えるようお手伝いいたします。

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