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はじめに
個人の確定申告において、所得控除を適切に活用することで、所得税の負担を大幅に軽減することができます。所得控除は、税金を計算する際に、所得から差し引くことができる金額を指し、様々な項目が用意されています。ここでは、個人の確定申告で押さえるべき主要な控除項目について解説します。
所得控除の概要
所得控除は、所得税を計算する上での課税所得額を減少させる役割を持ちます。所得控除を活用することで、結果的に税額が軽減されるため、正確に把握して申告に反映させることが重要です。
確定申告で押さえるべき主要な控除項目
1. 基礎控除
基礎控除は、すべての納税者が対象となる控除であり、年間48万円が所得から差し引かれます。2020年の税制改正で、基礎控除額が38万円から48万円に引き上げられましたが、合計所得金額が2,400万円を超えると段階的に控除額が減少し、2,500万円を超えると基礎控除が適用されなくなります。
2. 配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除は、納税者に所得が一定額以下の配偶者がいる場合に適用される控除です。配偶者の所得が48万円以下で、納税者の合計所得金額が900万円以下の場合、最大38万円の控除が受けられます。配偶者の所得が48万円を超えても、133万円以下であれば、配偶者特別控除として段階的に控除が適用されます。
配偶者特別控除額は最高で38万円ですが、配偶者特別控除の適用を受ける納税者本人の合計所得金額および配偶者の合計所得金額に応じて異なります。
3. 扶養控除
扶養控除は、生計を一にする親族がいる場合に適用される控除です。扶養親族が16歳以上の場合、一般的な扶養控除として38万円が適用されます。また、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)や老人扶養親族(70歳以上)であれば、控除額はさらに増加します。
4. 医療費控除
医療費控除は、その年に支払った医療費が一定額を超える場合に適用される控除です。総所得金額等の5%または10万円を超える医療費が対象となり、その超過分を所得から控除できます。医療費には、治療費や薬代のほか、通院のための交通費も含まれますが、予防接種や美容整形などは対象外です。
5. 社会保険料控除等
社会保険料控除は、健康保険、年金、介護保険などの社会保険料として支払った金額がすべて控除される制度です。給与から天引きされる社会保険料だけでなく、自身で支払った国民健康保険料や国民年金保険料、国民年金基金も対象となります。
6. 小規模企業共済等掛け金控除
小規模企業共済掛金等控除は、個人事業主や小規模企業の経営者が「小規模企業共済法」に基づいて支払った共済掛金を所得税から控除できる制度です。この控除を利用することで、所得税の負担を軽減することができます。
具体的には、以下の3つの掛金が対象となります。
- 小規模企業共済法に基づく共済契約の掛金
- 確定拠出年金法に基づく企業型年金または個人型年金の掛金
- 地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済制度の掛金
これらの掛金は全額が所得控除の対象となり、年末調整や確定申告で申告することで控除を受けることができます。
7. 生命保険料控除
生命保険料控除は、生命保険や介護医療保険、個人年金保険の保険料を支払った場合に適用される控除です。契約の種類に応じて控除額が異なり、最大で各12万円(合計36万円)の控除が受けられます。
8. 地震保険料控除
地震保険料控除は、地震保険に加入し、その保険料を支払った場合に適用される控除です。支払った保険料の全額が控除対象となり、最大5万円まで控除が認められます。以前は「損害保険料控除」として住宅火災保険も対象でしたが、現在は地震保険に限定されています。
9. 寄付金控除(ふるさと納税)
寄付金控除は、国や地方公共団体、特定公益増進法人に対する寄付を行った場合に適用される控除です。特に「ふるさと納税」として行った寄付は、寄付金額のうち2,000円を超える部分について、所得税および住民税から控除されます。ただし、ふるさと納税の控除額には上限があり、収入や家族構成によって変わります。
10. 住宅ローン控除
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、新築や中古住宅の購入、リフォームのために住宅ローンを利用した場合に適用される控除です。一定の要件を満たせば、控除期間は最大13年間で、年末のローン残高の0.7%が控除されます。
控除しきれなかった額は住民税から控除されます。住宅ローン控除は大きな節税効果が期待できるため、要件を満たす場合は必ず申告しましょう。
11. 雑損控除
雑損控除は、災害や盗難、横領などで財産に損害を受けた場合に適用される控除です。損失の金額に応じて控除が受けられますが、保険金などで補填された額は控除対象外となります。また、申告する際には、被害の内容や損失額を証明する書類が必要です。
確定申告における注意点
1. 控除証明書の提出
控除を受けるためには、各種控除証明書を添付する必要があります。たとえば、生命保険料控除には保険会社から送られてくる控除証明書が、医療費控除には医療費の領収書や明細書が必要です。これらの書類を失くさないように保管し、確定申告時に忘れずに提出しましょう。
2. 電子申告(e-Tax)の活用
確定申告は、税務署への書面での提出だけでなく、電子申告(e-Tax)を利用することも可能です。e-Taxを利用すると、税務署への提出が簡便になるだけでなく、場合によっては税額控除が受けられることもあります。電子申告を活用して、手間を減らしつつ適切な申告を行いましょう。
3. 申告漏れに注意
控除項目を適用する際には、申告漏れに注意が必要です。特に、複数の所得や控除項目がある場合、申告漏れが発生しやすいため、申告書の作成時には各項目を丁寧に確認しましょう。また、税理士などの専門家に相談することで、ミスを防ぎ、最大限の控除を受けることができます。
まとめ
個人の確定申告において、各種控除を適切に活用することで、所得税の負担を軽減することができます。基礎控除や配偶者控除、医療費控除など、押さえておくべき控除項目を理解し、確定申告の際に正確に申告することが重要です。
また、控除証明書の準備や申告漏れの防止にも注意を払い、適切な税務申告を行いましょう。これにより、無駄な税負担を避け、より有利な税務環境を実現することができます。