グローバル化が進む現代では、海外に資産を保有する日本の個人や企業が増えています。しかし、海外資産を相続する場合、国内の資産と同様に相続税が課される可能性があり、特に税務上の手続きや申告が複雑になることがあります。
ここでは、海外資産の相続税対策について、基本的な知識と具体的な対策を詳しく解説します。
このページの目次
1. 海外資産に対する相続税の基本
日本では、被相続人または相続人が日本国内に住所を有する場合、国内外の全ての資産が相続税の対象となります。つまり、海外に所在する不動産や預金、株式などの資産も、日本国内の資産と同様に相続税が課されるということです。
ただし、被相続人や相続人が非居住者(日本に住所がない場合)の場合、相続税の課税対象は日本国内の資産に限定されます。さらに、外国で課された税金がある場合、一定の条件の下で外国税額控除が適用されることがあります。
2. 海外資産の種類と評価方法
海外資産には、不動産、現地通貨による預貯金、外国株式、海外保険、海外法人株式など、様々な種類があります。それぞれの資産は、以下の方法で評価されます。
海外不動産
海外不動産の評価は、その不動産が所在する国の評価基準に基づいて行われます。一般的には、現地の評価書や公示価格を基に評価を行い、それを日本円に換算して相続税の申告を行います。
海外預貯金
海外の銀行や金融機関に預けられた預貯金は、被相続人が死亡した時点の残高を日本円に換算して評価されます。換算には、その日の為替レートが適用されます。
外国株式
外国株式は、被相続人の死亡日の終値、または死亡日の月を含む以前3か月間の平均株価を基に評価されます。評価額は、現地通貨で算出された後、日本円に換算されます。
海外保険
海外で契約された生命保険や年金保険は、その契約内容や現地での評価方法に基づいて評価されます。日本国内の保険と同様に、一定の非課税枠が適用されることがありますが、詳細な評価方法や課税の有無は契約内容によります。
3. 海外資産の相続税対策
海外資産を相続する際には、事前に適切な対策を講じることで、相続税の負担を軽減し、手続きをスムーズに進めることが可能です。以下に、効果的な対策をいくつか紹介します。
1. 生前贈与の活用
生前贈与は、相続税の負担を軽減するための有効な手段です。特に、年間110万円の基礎控除を活用して、計画的に海外資産を贈与することで、相続時の財産総額を減らし、相続税を抑えることができます。
2. 二重課税の回避と外国税額控除
海外資産に対しては、その所在国でも相続税や類似の税金が課される場合があります。日本と外国の両方で課税されると二重課税となるため、外国税額控除の制度を利用して、外国で支払った税金分を日本の相続税から控除することができます。これにより、二重課税による負担を軽減できます。
3. 適切な資産管理と文書の準備
海外資産に関する正確な情報と書類を整備しておくことは、相続手続きを円滑に進めるために不可欠です。財産目録を作成し、現地の評価書、銀行残高証明書、株式の証券など、必要な書類を保管しておくことで、相続発生時に迅速な対応が可能になります。
4. 海外に精通した専門家への相談
海外資産の相続には、国際税務に精通した専門家のアドバイスが不可欠です。税理士や弁護士など、国際的な相続問題に対応できる専門家に相談することで、複雑な手続きや税務処理を確実に進めることができます。
4. 国別の相続税制度と留意点
国によって相続税や類似の税制は異なるため、海外資産が所在する国の税制を理解することが重要です。一部の国では相続税がないか、非常に低い税率である場合もありますが、その場合でも日本の相続税法に基づく申告が必要です。
また、国によっては、非居住者に対して特別な税制が適用されることがあるため、その国の税務当局や現地の法律に精通した専門家と連携することが求められます。
まとめ
海外資産の相続税対策は、複雑でありながらも非常に重要な課題です。日本国内の相続税と同様に、海外資産に対する相続税の申告と納税を適切に行うためには、事前の準備と計画が不可欠です。特に、生前贈与の活用や外国税額控除の利用、適切な資産管理が、税負担の軽減とスムーズな相続手続きに繋がります。
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