相続税 / ワンポイント

間違えたではすまされない、相続時精算課税制度!!

一度選択したら撤回できない相続時精算課税制度の基礎控除について解説

令和5年税制改正により創設された相続時精算課税制度における基礎控除について解説
大変申し訳ありません。相続時精算課税の概要については割愛しています。

相続時精算課税制度の基礎控除は、令和6年1月1日以後に贈与により取得した財産に係る贈与税について適用されることになります。

■相続時精算課税制度(改正前)
(贈与税の課税価格-特別控除額)×20%

※特別控除額は2,500万円(既にこの規定の適用を受けた部分の価額を控除した残額)
 つまり、一生涯で2,500万円です。
 この特別控除額は、複数の特定贈与者(財産をあげる人)からの贈与受けた場合には
 それぞれ2,500万円あります。
 この特別控除額は期限内申告が絶対に必要です。

 例えば、父と母の両方と相続時精算課税制度の贈与を選択した場合。
  〇 父からの贈与について特別控除額2,500万円
  〇 母からの贈与について特別控除額2,500万円
 となります。

 この考え方があるがゆえに間違えてしまう基礎控除110万円です。

※相続税の課税価格に加算する財産の価額:贈与税の課税価格

■改正の概要
相続時精算課税の適用を受けた贈与に係るその年分の贈与税については、暦年課税(暦年贈与)の基礎控除とは別に、毎年、贈与額から基礎控除110万円を控除できることになります。

計算式
{(贈与税の課税価格-基礎控除)-特別控除額}×20%

※相続税の課税価格に加算する財産の価額:(贈与税の課税価格-基礎控除)

👉ポイント
 この基礎控除は、複数の特定贈与者(財産をあげる人)から贈与を受けた場合にはそれぞれの贈与額で按分することになります。

【解説】

 例① 祖父、祖母から、暦年贈与によりそれぞれ110万円、合計220万円の贈与受けた場合。

  ※220万円-110万円(基礎控除)=110万円

  110万円に贈与税がかかります。

 例② 父から、110万円の暦年贈与、母から相続時精算課税による贈与110万円を受けた場合。

  ※ 父からの贈与分:110万円-110万円(暦年分の基礎控除)=0

  ※ 母からの贈与分:110万円-110万円(相続時精算課税の基礎控除)=0

  よって、申告不要となります。
  母からの贈与について相続時精算課税の初年度の場合、「相続時精算課税選択届出書」を
  申告期限までに納税地の所轄税務署へ提出
する必要があります。(2年目以降不要)  

  例③ 父と母からそれぞれ相続時精算課税により110万円の贈与を受けた場合。
                              (それぞれ初年度の場合)
  ※ ㋑ 父からの贈与分:110万円-55万円(基礎控除)=55万円

    ㋺ 55万円-55万円(特別控除額)=0 → 税額は生じませんが申告が必要

   〈父からの贈与分に対する基礎控除〉

     110万円(基礎控除)×110万円(父〉課税価格)/220万円(父と母の課税価格の合計)

    =55万円

  ※ ㋩ 母からの贈与分:110万円-55万円(基礎控除)=55万円

    ㊁ 55万円-55万円(特別控除額)=0 → 税額は生じませんが申告が必要

〈母からの贈与分に対する基礎控除〉

    110万円(基礎控除)×110万円(母の課税価格)/220万円(父と母の課税価格の合計)

    =55万円

  ※ 父と母からのそれぞれの贈与について初年度ですので「相続時精算課税選択届出書」を
   申告期限までに納税地の所轄税務署へ提出
する必要があります。(2年目以降不要)

■結論

 相続時精算課税制度の基礎控除を理解しないまま選択してしまうと、こんはずではなった
基礎控除110万円となってしまいます。
 つまり、申告不要だと思ったのに必要になった。相続税の課税価格に加算される金額が増えてしまった。
 申告不要だと思ったのに後日申告が必要となった場合・・・・申告期限後に申告することとなった場合、特別控除額を控除することができないため20%の税率で贈与税が発生します。

相続時精算課税制度を一度選択してしまうと撤回できないため、二度と暦年課税による贈与には戻ってこれらません。要注意です。

2025年2月25日

相続放棄の実際の手続きとその流れ

自称サスペンスの帝王は見た~!!
サスペンスの場面ではこんなこと言っていなかった。

サスペンスのワンシーンで出てくる、八百屋の前で会議をしている奥様の会話です。
私は相続放棄したのよ・・・・・。
はんこだけ押してあげたのよ・・・・。

これは、財産をもらわなかっただけで、相続放棄をしたわけではありません。
実際の相続放棄の手続きは次の流れで行います。
相続放棄をすると、遺産分割協議書に押印することはありません。

◆相続における3つの選択
 相続が発生すると相続人となる者は、単純承認(プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する)、もしくは限定承認(プラスの財産の範囲内でマイナス財産を引き継ぐ)、または相続放棄(遺産の相続を放棄しプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しない)のいずれかを選ぶことになります。
 相続放棄を選択するのは、一般的に借金が多い場合と考えられますが、借金がなくとも相続にかかわりたくない、財産分与ゼロでハンコを押すのはしゃくだなど、他の理由であっても自分の意思で選べます。
◆相続放棄の手順
(1)家庭裁判所へ相続放棄を申述する
 相続放棄の申述は,民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所にしなければならないと定められています。申述書に申述内容を記入し、被相続人の住民票除票又は戸籍附票や申述人(放棄する人)の戸籍謄本など(=申述人の被相続人との関係性により必要書類は変わってくる)を添付して家庭裁判所に書類を送ります。
(2)家庭裁判所から「照会書」が届く
 申述後、家庭裁判所から「照会書」が届き、①誰かに強要されたり、②他人が勝手に手続きしたり、③相続放棄の意味がわからず手続きしていないかなど、その申述が本人の真意によるものかの確認がなされます。
 書類をよく読んで、真意である旨を「回答書」に自筆で記載し期限内に返送します。
(3)「相続放棄申述受理通知書」で完了
 家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」(相続放棄が無事に認められた旨の通知)が届いて手続き完了となります。
 なお、他の相続人が相続手続きをする際に「相続放棄申述受理証明書」の原本が必要となります。通常は、受理通知書が届いた後に受理証明書の交付申請を行いますが、事前に受理証明書の交付申請を行えば受理通知書に同封されて受理証明書も届きます。
◆相続放棄のデメリット
 相続放棄が完了すると後から撤回できないため、相続放棄完了後に莫大な財産が見つかったとしても、その財産を引き継ぐことはできません。また、他にも個々の事情で発生するデメリットもあり得ます。放棄に際しては、司法書士などの専門家に相談しながら手続きすることをお勧めします。

2025年1月20日

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